顔ダニって聞いたことはありますか? もし、お肌の調子がよくなく、食事・ストレス・化粧品などほかに原因が思い当たらければ、疑ってみるようにしましょう。

顔ダニの症状と特徴

顔ダニとは

ダニは昆虫ではなく、むしろクモに近い生き物です。
顔ダニもその名前の通りやはりダニの仲間で、

・ニキビダニ(Demodex folliculorum)
・コニキビダニ(Demodex brevis)

の2種類います。

どちらも人間の皮膚に住んでいて、コニキビダニは毛穴を包み込む毛包の奥の方に潜んでいます。かゆみや痛み、刺激、湿疹といったトラブルになることはありません。

問題はもう一方のニキビダニの方です。顔ダニといったときは通常はこちらを指します。コニキビダニとは違って、毛包の浅いところにいます。大きさは0.3ミリ程度で、細長い形をしています。肉眼で見つけるには少し難しい大きさです。
これが6-8匹程度固まって住んでいて、昼間は毛包の中にいます。夜になると出てきて皮脂などを食べ、明るくなると再び毛包に戻ります。寿命は2週間程度です。

と、聞くと薄気味悪く思う人もいるかもしれません。しかし、ほとんどの人がニキビダニもコニキビダニを持っています。治療の必要がないどころか、全くいないと今度はお肌のコンディションを崩してしまいます。というのは、ニキビダニが食べてくれることで、皮脂の分量が適切に調整できるのです。

また、同じく皮膚に寄生するダニが引きこすトラブルに疥癬があります。こちらの原因となるのは、ヒゼンダニです。強烈なかゆみが出るので、顔ダニと混同することはまずはないでしょう。チリやホコリに混じって咳などの原因になるのは、主にヒョウヒダニ(チリダニ)類、コナダニ類、ツメダニ類なので、これもまた違う種類です。

顔ダニの動画

顔ダニの顕微鏡映像

 

顔ダニの症状

問題は主に数が増えすぎたときに起こります。次のようなトラブルが知られています。

・かゆみ
顔ダニには肛門がなく、便も出しません。2週間ほどの寿命の間に3回程度脱皮し、排出物といえそうなものはこの皮ぐらいです。そのため、最後は食べたものがまるまる詰まっている死骸となって皮膚の上にくっつきます。これに皮膚がアレルギーなどの反応をして、赤み・かゆみが出るのです。
もし、朝起きたときに特に症状がひどいようならこの可能性を考えてみましょう。夜の間に脱皮したり、外に出て死んだりするからです。

・酒さ(しゅさ)
顔が火照ったように真っ赤になるトラブルに酒さがあります。特に鼻やほおの血管が炎症状態になり、浮腫まで出ることがあります。診察を受けても、原因不明のままのことが珍しくありません。これも顔ダニが引き起こしている場合があります。

・ニキビ
顔ダニ単独でニキビができるほど強力ではありません。ニキビの原因そのものというよりも、悪化要因と考えたほうがいいでしょう。つまり、顔ダニ以外には問題がなければニキビができなかったり、できてしまったりしたものはそれほどひどくならずに済んでいたかもしれません。
ニキビは毛穴に皮脂や汚れがたまり、それが酸化することで起こります。顔ダニの死骸などがその汚れに一部に加わってしまうのです。

また、ニキビによく似た症状も引き起こします。ただ、よく観察すると、ニキビとは次のような違いが見つかるでしょう。
1)発生直後からかゆみがひどい
2)化膿もしないのに毛穴付近が赤くなる
3)芯(毛穴の中に詰まって固くなっている汚れなど)はない

・乾燥肌・脂性肌
皮脂といえば、脂性肌の正体そのもので、目の敵にしている人も多いかもしれません。しかし、肌を乾燥から守る役割も持っています。顔ダニが増えすぎて皮脂を必要量以下まで食べ進むと、乾燥肌になります。

「肌が乾燥している」と体のほうが判断し反応すると、一気に皮脂の分泌量を増やして、今度は脂性肌に傾くこともあります。顔ダニのエサも豊富になるので、また増殖して皮脂を大量に食べ……となると、乾燥肌と脂性肌の間を行ったり来たりする難しい状態にもなりかねません。

・肌の老化
ここまで挙げたどの症状もお肌に負担をかけます。老化も早く進むと考えていいでしょう。
それだけではありません。いくら小さいとはいえ、多くの顔ダニが毛包・毛穴を出入りすると、そこに傷ができます。ウイルス・病原菌の侵入を防ぐ必要から活性酸素の働きが盛んになり、肌の細胞にまで負担をかけてしまうのです。

顔ダニってうつるの?

顔ダニはうつります。

それは直接の接触もあれば、布団やまくらなどの寝具を通しての場合もあります。ただし、適切な数ならいたほうがいいものです。それほど神経質になる必要はないでしょう。

目指さなければいけないのは、「顔ダニが繁殖しすぎるような環境を自分の肌に作らない」です。

顔ダニが増える原因

顔ダニが増える原因には次のようなものがあります。対策は直接的に顔ダニの数を減らすよりも、これらの原因となっているものをなくすのが先決です。

皮脂の分泌量の増加

先に話に出てきたように、皮脂は顔ダニのエサなので、分泌量がふえると大繁殖します。
その皮脂が増える理由は、「生活習慣・食生活の乱れ」「刺激物や脂分(油分)の多い食事」「間違ったスキンケア」「肌の老化」などです。

免疫力の低下

免疫力が低下すると、顔ダニをはねつけることもできなくなります。
これは体調不良や老化でも起こります。実際に多いのは、湿疹などの皮膚疾患の治療をしようと、ステロイドなど薬剤を使うパターンです。中には、顔ダニによる肌の荒れを治そうとステロイド入りの軟膏を使用し、さらに顔ダニを増やしてしまっている場合さえあります。

不十分な洗顔

顔を洗いすぎて必要な皮脂まで落としてしまうと、

・肌の免疫力を落とす
・肌がその減少分を補おうとして逆に皮脂の分泌量を増やしてしまう

といったかたちで、顔ダニを増やしてしまうことにもなりかねません。

かといって「皮脂の落とし過ぎはよくないから」といって、不十分な洗顔しかしていないと、やはり顔ダニにエサを残してやることになります。

同様に、クレンジングやメイク落としも過不足なくやらなければいけません。不十分な場合は毛穴に残った汚れ・クレンジング剤・メイクなども顔ダニのエサになってしまいます。

顔ダニ対策

ここまでにご説明したように、直接的に顔ダニを退治しても根本的な解決にはなりません。繁殖力が強いので同じ状況が残っていたら、増殖してすぐに元に戻ってしまいます。

とはいえ、それが分かっていても、すぐに効果が欲しい場合があるでしょう。その場合は次のような方法があります。

顔ダニの薬

もし病院に行くのなら、診療科は皮膚科です。そこでは外用薬(塗り薬)としてイオウやクロタミトン配合されたものを出すことが多いようです。

イオウには角質を軟らかくして毛穴の中の汚れを出しやすくする効果、クロタミトンにはかゆみ止めの効果があります。
くれぐれも、市販薬でも手に入るからといって、ステロイド系の塗り薬を使うようなことはないようにしましょう。

顔ダニの石鹸(せっけん)

「顔ダニが退治できる」という石鹸や洗顔フォームも市販されています。しかし、皮膚科医など専門家はその効果を疑問視しています。というのは、石鹸などの泡は顔ダニが普段いる毛包の中にまでは届かないのです。

≫≫ 【楽天】顔ダニ石鹸の人気ランキング

顔ダニを駆除するパック、エステ

また他、エステサロンの中には、「顔ダニ対策にもなる」という顔パックをメニューとして用意しているところもあります。

顔パックをすることで毛穴の中の汚れが取れ、顔ダニのエサも減ります。ただ、これも顔ダニ石鹸と同じで、直接的に顔ダニをたたくような機能をもたせることは難しいようです。

≫≫ プリートの顔ダニコース

顔ダニって目に見える?

先にもお話ししたように、顔ダニは0.3ミリぐらいの大きさです。「肉眼では見えない」ともご紹介しました。中には、「0.3ミリならかろうじて確認できるのでは?」と思う人もいるかもしれません。

実際、セロハンテープを使って毛包の奥にいるのをくっつけてきたり、角質を削ったりして取り出すような人もいます。

しかし、ほかの汚れなどと混じってしまって、それらと見分けることはできないのが実際のところのようです。もし、どうしても確認したいのなら検査用の器具をそろえ、取り出したものを顕微鏡で見るしかありません。

顔ダニがいない人っているの?

顔ダニはいるのが普通です。また、顔ダニやニキビダニと呼ばれるからといって、顔だけやニキビだけにいるものでもありません。

ただし、生まれたての赤ちゃんにはいません。家族などがほおずりなどをすることで、うつることはありえます。だからといって神経質になる必要はないでしょう。顔ダニが付いたからといって、それだけでトラブルが起こるようなことはありません。

もう一度思い出してほしいのは、本当にトラブルになるのは、顔ダニが大繁殖するような皮膚のコンディションになってからです。健康に問題のない赤ちゃんなら大丈夫です。

まとめ

「毛穴(毛包)の中にダニが何匹も住んでいる」と初めて知った人は、ちょっと気味が悪かもしれません。

しかし、その状態は異常でもなんでなく、皮膚の健康にも一役買っています。間違っても、「徹底的に退治してやる」などと思わないようにしましょう。

また、「顔ダニが退治できる」という商品の多くは、全く効果がないか、肌に余分な負担を与えて逆に顔ダニを増やしてしまうようなものばかりです。

本当に顔ダニ対策をしたいのなら、肌の健康度を高めることです。やるべきことは、ほぼ美容のための肌のお手入れと同じです。「顔ダニ対策だけのために特にやるようなことはない」といっていいでしょう。

また、逆に感染症、腫瘍、糖尿病などのトラブルを抱えていると、どの種類とはいわずダニが増えてしまう傾向があります。免疫力が下がっているからです。もし、あまりにダニの悩みがひどいようなら、ほかの疾患も疑ってみたほうがいいでしょう。